こんな画家がいるんだなあ~、と、鑑賞中に胸のドキドキ感が止まりませんでした。
ワクワクといってもいいのか、絵を見ているときにこのような状態になることは、そう滅多とないことです。
絵を自分の自由に描くことはとても難しいです。先日の不染鉄氏も語っていましたがついつい形通りに描くことに入り込んでしまい、あえて自由に描こうとすると、収拾つかなくなってしまいます。
そこで、牡丹氏の自由とは、作ろうとしてつくったものでないように思うのです。
かといって、絵本では、とても繊細な、ある意味型にはまった絵柄で、やはり自由な画面をつくりだしています。
どうです、「たまのりひめ」という絵本の部分なのですが、各々のモチーフはとてもきっちりと描かれていますが、全体を見ると自由な画面ですね。内容も、思わず笑みがこぼれてしまいます。「あーこの人は、上質な愉快さをもっておられるんだ」と思います。最近笑いの質が話題になっていますが、人にとって必要な笑いとそうでない笑いの違いに気づかされますね。
話が逸れてしまいましたが、ブールデルの彫刻から発想された絵画も、受胎告知の絵画から空想された絵画も、彼の筆にかかると、「愛溢れるもの」となってしまいます。
とにかく、全体を観て細部を見てまた全体を眺めて、心がウキウキと弾んでいくことを止められなかったのです。油絵の具をぼかしたり染み込ませたり、鉛筆や色鉛筆を引っかいたり伸ばしたり、その描く行為も自由で心地よい。
最後の部屋の大作は、実は細部に描かれている形はあまり好きではないんだけれど、全体的にハーモニーが奏でられていて、ホックにーの大作に匹敵する画面だと思いました。
この展覧会は、とてもおススメです。