2024-01-01から1年間の記事一覧

つくるを受け継ぐもの

大好きなロックオペラ「JESUS CHRIST SUPERSTAR」を、劇団四季のエルサレムバージョン公演で観ました。この作品との最初の出会いは、1973年制作の映画を高校時代に名画座で観たことになります。大阪肥後橋の大毎劇場であったか京都一条寺の京一会館であった…

顔をうつす

大阪本町ギャラリー446で、宮本敏明さんの写真展が行われています。 宮本 敏明 展 「Portraits」 @ギャラリー446 5/4まで 今回は新作で、今までの延長でありながらも、ひとつ壁を越えた写真になっていると思いました。 このギャラリーに集う人々面を捉えてい…

刻みつくるもの

安藤榮作さんの木彫の実物を見たくなって、奈良での個展に訪れました。 安藤さんとは面識はないのですが、ふとSNSで目にした木彫作品に興味を持ち、また東日本大震災で被災されそれから奈良に転居されて彫り続けられておられるとのことでしたので、そのお話…

モニュメントをつくる

京セラ美術館で開催中の村上隆展が大好評で平日でも多くの方が訪れていました。隣の京都近代美術館での富岡鉄斎展に訪れた際、前回では出来上がっていなかった屋外彫刻を見ようと立ち寄ったのですが、期待以上にカッコが良かったです。 私は村上隆氏の作品に…

伝説をつくるもの

雪舟展を京都国立博物館に観に行ってきました。何々伝説と名しているこの手の展覧会は、得てして当事者の作品が集められずに周辺の作品で構成されていることで落胆することこともあるのですが、本展覧会は、6点の国宝すべてを配置した3階フロアが夢のよう…

暗闇の中で美をつくるもの

今回のマチス展を見ているときに何故か長谷川利行を思い出し、その後2つの本を読みなおしてみました。「マチスのみかた:猪熊弦一郎著:作品社」と「長谷川利行の絵:大塚信一著:作品社」です。意識はしていなかったのですが、どちらも同じ出版社から送り…

歓待する場をつくる

小野正嗣さんが、最後となる担当の日曜美術館で河井寛次郎記念館を訪れていました。小野さんが美を語る姿勢はとても好きだったので少し寂しさを覚えます。番組最後に食事をおいしそうにいただくお姿なのが美術に対する氏の考え方を表しているのではないかと…

祈りの姿をつくる

祈りの姿を作り続けたいと願っています。 そのような折りの絵を、好きな作家さんが描いて展示していると知って観に行ってきました。その構図が、以前に描いた絵とよく似ていたので、その主題の意味を知りたかったのです。 島村信之展 @gallery Suchi 作品は…

松本涼氏のつくるもの

薄い儚さを表してみたいと思っていた矢先、松本涼氏の彫刻を知って、ああ私が作りたかったものをすでに生み出されていると愕然としました。それは羨望であり、口惜しさというより、熱烈なファンになっていって、いわゆる「推し」というものでしょう、もう5…

見ることに徹してつくり出された抽象

大阪中之島美術館に福田平八郎展を観に行きました。その昔子供の頃に父親から、福田の「鯉」の絵は水を描くことなく鯉のみを描いて水の中を表すことが出来ている、と教えて貰いました。また、「漣」を日本画の一つの到達点だとも言っており、半装飾的な風景…

人の一生でつくれるもの

ゲーテはその天井画を見て、「システィナの礼拝堂を見ないで一人の人間が何を成し得るか考えることは出来ない。」との言葉を残しています。 そんな同じ思いを、極東に住む若い青年に重ね併せて、再び富山に足を運びました。当日は、作家の対談イベントがある…

つくるさいの位置 クロード・モネ展 ~連作の情景~

モネの大きな展覧会が大阪中之島で開かれています。 過去何度も取り上げられた画家であっても、学芸員の方々はご自分の切り口で作家を検証すべく新しい切り口の見解を共有しようとされます。今回も、使い古された連作を、今までとは違った表示に苦労された跡…

下地をつくる

これまで幾度となく見ていたので食傷気味になっていましたが、新たな発見に驚くばかりです。 藤田嗣治展 ~心の旅路を探る~ 大山崎山荘美術館~ まず、展示された手紙を通じて、絵で人生を表した人でることに嫉妬します。自分の思いや考えを、言葉も多く用…

職方さんのつくるもの ~茶入牙蓋~

パンデミック前から京都の象牙屋さんを3度ほど訪れて、茶入れの牙蓋を作る職方さんのお話しを聞くことをしてきました。90歳になろうかという職方さんのお話は、作り手に多くの示唆に富んだ視点が与えてくださいますので、創作の輝きが胸の奥から漲ってくる…

村上隆らのつくるもの 「もののけ京都2024」

村上隆展 ~もののけ京都~ @京セラ美術館 村上隆展を観ての印象は、楽しいテーマパークで遊んだという感覚で、これは、村上氏の狙い通りだと思います。 素直に、どの作品も「美しい」と感じたし、所謂美術展とは違う楽しみ方をする、こういった美術展も有…

本阿弥光悦のつくるもの 「土の刀剣」

本阿弥光悦作の茶碗は何度でも見たくなります。 その目的は二つあって、一つは、光悦碗を観ていると、もっと自由に生きていいんだよ、って励ましをもらえるからです。今回展示の茶碗も、そのほとんどが初めから狙っていたのではないかと思うぐらい焼成時に入…

棚田康司の木でつくるもの 

人類学者の山極寿一氏が、他の哺乳類と違って人間に白目があるのは、それでコミュニケーションをとっているのだ、と言われていたのを、今回棚田康司さんの木彫展をみて思い出しました。棚田さんは、自身の人体彫刻制作の際、杏形に開いた空間のでの黒目の位…

絵画としてつくるもの

とても好きな絵描きさんの展覧会ですので、その都度逃さず足を運んできたのですが、今回思いがけず前日にその開催を知って、またそれは小さなギャラリーでもあったので、小品がほんの数点並んでいる程度かなあと思いながら、久しぶりの出会いを楽しみに向か…

絵画としてつくり、語るもの

益村千鶴さんの絵を観に行きました。以前は某大型書店の片隅での展示でしたので、とてもせわしい鑑賞でしたので、もちろんその時は初めて実物に出会えたことでの感動を覚えていたのですが、今回、まさにこの方の作品の為に拵えたかのような空間に飾られた絵…

牡丹靖佳のつくるもの

こんな画家がいるんだなあ~、と、鑑賞中に胸のドキドキ感が止まりませんでした。 ワクワクといってもいいのか、絵を見ているときにこのような状態になることは、そう滅多とないことです。 牡丹靖佳展 ~月にのぼり、地にもぐる~ @市立伊丹ミュージアム 絵…

心の世界をつくるもの

いつの時も、革新を生み出す先人がいて、そこに感化された追従者がいます。先人は創出者としての迫力が抜きん出ているとして、追従者は様々なタイプに分かれているので、決して全てが一級品になるとは限りません。京都文化博物館で日本のシュルレアリスム展…

「がめんをつくる」 不染鉄展 @奈良県立美術館

遠くない昔に開催されていたと思うのに再び企画されるとは、根強い人気が後押ししているのだろう。かくゆう私も、忙しさで気分がすぐれないながらも無理をして駆けつけることにしたのは、彼の絵から言葉がほしかったからでしょうか。 29年前の震災と同じよう…

「へやをつくる 部屋を描く」 寺林武洋展~LIFE~ @入善町下山芸術の森発電所美術館

北陸地震で継続も心配されたが、富山での寺林武洋さんの大規模個展は無事に再開されています。 入善町下山芸術の森発電所美術館 それでふと思い出したのは、自分は阪神淡路大震災の2週間後に大阪での個展を控えていて、隣接する神戸に何の援助もしないまま…

「ひかりをつくる」 テート美術館展 @大阪中之島美術館

オラファ―・エリアソンの「黄色vs紫」 絵画は再現の記録として発達してきたので、光をどのように表現するかが画家の目的でありました。それは単純な明暗だけでなく、彩度や色相対比なども駆使して、見えない光を画面で感じさせようと工夫しています。今回、…

【紙をつくるもの】「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」 佐々涼子著 早川書房

佐々涼子さんは実話を紡いで物語をつくっている。たまたま見たテレビ番組で彼女が現在病と闘っていることを見て遅まきながら佐々涼子という作家の存在を知り、その著作物を取った次第だ。「エンジェルフライト」「エンドオブライフ」そして今作と、年の変わ…